三つ目がとおる

手塚治虫漫画全集 全13巻

全13巻 作者:手塚治虫
出版社:講談社
初出時期:1974年(少年マガジン)
分野:少年マンガ
ジャンル:SFミステリー
内容:古代人類・三つ目族の末裔・写楽保介が超古代文明にまつわる事件を解決していく伝記SFミステリー作品。


1970年代にオカルトブームが起こり、様々な神秘的なものがもてはやされました。
そんなブームに乗り、手塚治虫氏が久しぶりに週刊少年マガジンに登場した作品です。
現存する遺跡の謎などが非常によく調べ上げられ、手塚氏独自の発想でストーリーに展開されていっていると思います。


主人公の写楽保介は、額に眼球のような感覚器官を持つ古代人類の三つ目族の最後の生き残りです。
普段その目はトレードマークとなっている絆創膏で塞がれていて、
中学生を留年していると言う幼稚園児並の知能なのですが、いざその絆創膏を剥がして第三の目が現れると、
様々な超能力が使え、難解な古代文字を解読したり、ガラクタから不思議な機械を作ったりする超天才へと変貌するのです。
三つ目族の遺産である赤いコンドルを呼び出す呪文は「アブトル・ダムラル・オムニス・ノムニス・ベルエス・ホリマク」。
この呪文を懐かしく感じる方もいるのではないでしょうか。
ちなみに「写楽保介(しゃらく・ほうすけ)」の名前は、
アーサー・コナン・ドイル作の推理小説で御馴染みの「シャーロック・ホームズ」からのもじりだそうです。
そして写楽保介が唯一心を許しているヒロインの「和登サン」こと和登千代子は、
もうすでにお解りのようにホームズの友人の「ワトソン」のもじりとなっているようです。


超古代の歴史ミステリーという内容や、写楽保介の魅力的なキャラクターの影響から、
当時は少年誌掲載でありながら、女性のファンも多く掴んでいたようです。
そして作品中で語られている「繰り返される文明の愚かしさ」という言葉は、
過去に栄華をほこった三つ目族も現代社会同様にゴミ問題に悩まされ、
戦争を繰り返し、見栄を張り、そして滅びていったとされています。
手塚治虫氏ならではの問題提起がなされている作品だと思います。
こういった作品から現代社会を見つめなおすことが大事なことではないかと感じました。


アニメ作品としては、過去、日本テレビの24時間テレビで放送されたことがあります。
そして1990年にテレビ東京で原作をベースに連続アニメーションシリーズが全48話で放映されました。

(漫画本エッセイ168)