幻冬舎文庫 全2巻
作者:ジョージ秋山
出版社:幻冬舎
初出時期:1970年(少年マガジン)
分野:少年マンガ
ジャンル:人間
内容:鬼才ジョージ秋山氏が、人間と言う生き物の本質を探る衝撃の代表的傑作となる超問題作。
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この作品が連載されていたのは少年マンガ誌でしたが、R15指定にしてもいいのではないかと思うほどの衝撃的な内容の作品です。
連載していた当時もやはりこの作品は問題となり、一部の地域では有害図書に指定されたそうです。
確かにそれも仕方ないような内容だとは思います。
しかし、そういった部分に蓋をして目を向けないというより、あえて人間の醜い本性を見せることにより、
作者のジョージ秋山氏は何かを伝えたかったのではないでしょうか。
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冒頭から極限状態の飢餓によって人肉を食べると言う、衝撃的な描写から始まります。
そして極限状態の中で主人公の「アシュラ」が生まれます。
深くはストーリーをお話することはできませんが、望まれぬ命を受けたアシュラのケダモノのような凄まじい生きざまが展開されていきます。
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本当に人間は、極限状態に陥ってしまうと、ここまでになってしまうのだろうかと思わず考えてしまいました。
現代の飽食に包まれた日本に住む私たちは、ここまでの極限状態を味わった人は、ほとんどいないことでしょう。
ちょっとお腹が減っているだけで、人は怒りやすくなるものです。
飢餓と言う極限状態を知らない私たちにはなかなか分からないことです。
分からないからこそ、こういった作品に触れることにより、食べられることのありがたさや、
平和に生活できていることに感謝する気持ちを持てるのではないかと思いました。
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絶版となっていたこの問題作を、21世紀のこの時代に、あえて復刊させた幻冬社に思わず敬意を表したいと思いました。
救いようの無い悲惨な物語ですが、こういったことにもあえて目を向けることも大事なのかもしれません。
そして最後には、人間も他の動物と同じ仲間だと思います。
しかし他の動物と唯一違うのは、「理性」というものを持っていると言うことです。
人間だけがもつこの「理性」というものを信じたいと言う気持ちになりました。
2012年にフルCGアニメーションによるアニメ映画が制作され公開されました。
(漫画本エッセイ164)
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