ジャングル大帝

手塚治虫漫画全集 全3巻

作者:手塚治虫
出版社:講談社
初出時期:1950年(漫画少年)
分野:少年マンガ
ジャンル:動物・ライオン
内容:ご存知白いライオン・レオが大活躍する動物たちの世界から描かれた感動大作。


実はこの作品、初登場したのはとっても古い時代なのです。
あの手塚治虫氏の代表作「鉄腕アトム」よりも前に描かれているのです。
1950年に「漫画少年」で連載が開始され、これが手塚氏にとって中央での本格的作品のデビューとなりました。
当時漫画少年を読んでいた子供たちは今や60歳にもなっているのです。
しかしこの作品は今でも全く古さを感じさせない素晴らしい作品だと思います。
動物が主役というところも人気の秘密なのでしょう。
そしてレオ以外にも手塚氏の手によって多くの動物キャラが登場してきます。


白いライオンという、とても強いインパクトのキャラクターを考え出したきっかけは、偶然のものだったそうです。
手塚氏がライオンの水彩画を依頼されたことがあり、白熱灯の下で彩色したことが影響していたのだそうです。
実際に納品したものは色がとても薄くなってしまい、没になってしまった事があったのだそうです。
しかしこの時に描き上がった白っぽいライオンのイメージがレオになったので す。


手塚氏は大のディズニーファンというのは周知のことです。
そしてこの作品はディズニーのアニメーション映画「バンビ」に影響を受けて描かれたそうです。
そのディズニーが後に、この作品にそっくりの「ライオン・キング」を作りましたが、
手塚氏の遺族は仮に盗作だとしても、その件に関して問題にはしなかったそうです。
それはきっと本人にとってはは光栄なことだと思ったであろうという理由からなのだそうです。


何と言ってもレオが国民的アイドルとなったのは、1965年にフジテレビ系で放映開始されたアニメによるところが大きいでしょう。
当時放送が開始され始めたカラー放送で、大自然に彩られたアフリカのジャングルを駆け回るレオの姿を見たら、
子供から大人まで夢中になったことでしょう。
アニメ作品はアメリカにも輸出され「Kimba the White Lion」というタイトルで放送されました。


この作品は、黒人描写に関して差別だとして抗議を受ける問題が起きたりしたこともありましたが、
自然の大地で仲間の動物たちと生きていくレオの姿の純粋さには、大人から子供まで素直に感動できるのではないかと思います。
1950年代という戦後まだ間もない頃に、これだけの作品を描き上げた手塚治虫氏の才能は、本当に素晴らしいものだと感じました。

(漫画本エッセイ163)