神の左手悪魔の右手

小学館文庫 全4巻

作者:楳図かずお
出版社:小学館
初出時期:1986年(ビッグコミックスピリッツ)
分野:青年マンガ
ジャンル:ホラー
内容:現実と夢の中から主人公の想を恐怖が取り巻いていく。
楳図ワールド最大のスプラッター映像が広がる戦慄のホラー作品。


ともかく最初の1ページ目から、物凄いスプラッターな画面が全面に広がります。
スプラッターが苦手な方は、くれぐれもお気をつけてください。
しかし楳図ファンにとってはもっとも好きで、最も怖いと言われている作品なのです。
5つの物語からなるオムニバス的な作品になっていますが、全ての主人公は小学1年生の山の辺想。
想は様々な恐怖に関わっていき、その時に見る夢が現実なのか夢なのか分からなくなっていきます。
そしてその夢が重要な鍵を握っていくのです。


しかしよくもここまで凄まじいシーンが描けるものだと、作者の楳図かずお氏には驚嘆させられます。
最初のストーリー「HORROR1/錆びたハサミ」は、
内側からの恐怖というか、ある意味人間にとって逃れられることのできない恐怖が描かれています。
このように単なるスプラッターものというだけではなく、
人間にとっての恐怖とは何なのかが奥深く感じられることが、楳図作品の真髄なのではないでしょうか。


楳図氏の描く作品には、正体不明の化け物がよく出てきますが、結局こういった化け物の恐怖よりも、
普通の人間の奥底に潜んでいるものが一番の恐怖になっているのではないかと感じます。
この作品のタイトルのように、人間には悪魔と神の両方の心が眠っているのではないでしょうか。
そしてこの作品の主人公でもある子供というキャラは、楳図作品の中でよく使われますが、
楳図作品を読んでいると、子供というものは純粋と残酷が同居している存在なのかもしれないと感じました。
純粋な心というものは、時には相手にとって残酷になることもあるのかもしれません。


2006年に実写映画となり公開されました。
監督はあのガメラシリーズを手がけ、「デスノート」がでも大当たりした金子修介氏です。
この監督が手がけたのなら、映像にはある程度の期待が持てると思うので すが、
この作品をいったいどこまで映像化したのだろうかと、非常に興味のあ るところです。

(漫画本エッセイ157)