花とゆめCOMICS 全19巻
作者:樹なつみ
出版社:白泉社
初出時期:1992年(ララ)
分野:少女マンガ
ジャンル:巫女
内容:歴史の渦の中、時を越えた壮大な叙事詩が神の宿る出雲の地から始まり、様々な運命が繰り広げられていくヒロイック・ホラーの超大作。
◆
タイトルの由来である日本で最初の和歌がこれです。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻篭みに 八重垣作る その八重垣を」
これからもわかるように、舞台は神の宿る地として知られる島根県の出雲の国から始まります。
主人公の布椎闇巳(ふづちくらき)は、その出雲に住む巫女です。
巫女というと、お正月の神社で白い着物に赤い袴の女性というイメージですが、本来の神教での巫女は「シャーマン」とも呼ばれるのです。
これがまた霊的術師とは違い、神と人間の間に立ち、神をその体に憑かせて神の意を伝えるものなのだそうです。
その主人公・闇巳はシャーマンとしての類まれな能力で、運命の道を歩みだしていきます。
◆
主人公の闇巳の他にも個性豊かなキャラがいろいろと登場します。
その中でも最も重要な存在なのが、ごく普通の大学生の七地です。
この二人の関係が非常に重要で面白いのです。
少女マンガに良く有りがちなボーイズラブには行きません。
何か男と男の友情や信頼などの方が強く感じられ、男性にも十分に楽しめる作品になっていると思います。
二人の関係以外にも、人間関係が複雑に入り乱れ、裏切りや信頼など、人間模様的な見所も楽しめると思います。
単なるホラーもの以上の感動を感じられるのではないかと思います。
◆
「スサノオ」などが出てくる日本書紀や古事記をテーマとした古代日本とのリンクは、とかく難しくなりがちです。
しかしこの作品は非常に分かりやすく、逆に今だからこそ古事記を読んで見ようと思ったりしてしまいます。
さらに舞台の中心となる出雲の神秘的な雰囲気は、一度は実際に行ってみたいと感じるのではないでしょうか。
ともかく息をもつかせぬ展開で、全19巻という長さも、一気に読み進めていけると思います。
◆
1997年にOVAとしてアニメ化され、その年には第21回講談社漫画賞を受賞しています。
ちょっと変わったところでは、コロムビアミュージックエンタテインメントから、ドラマCDというものが出されています。
もちろん映像は無いわけですが、ちょっと試聴してみたら、けっこう面白く、よくできているものだと感じました。
(漫画本エッセイ147)
|