日本沈没

原作:小松左京
作画:さいとう・プロ
出版社:講談社
初出時期:1973年(少年チャンピオン)
分野:少年マンガ
ジャンル:SF
内容:日本SF界の第一人者・小松左京原作の戦慄のSF大巨編。


劇画という分野を確立した「ゴルゴ13」でご存知の、さいとう・たかを氏を中心とした「さいとう・プロ」と、日本SF界の第一人者・小松左京氏が手を組んだSF超大作です。
小松左京氏の小説は、1973年に光文社のカッパノベルスから刊行され、大ベストセラーとなりました。
同じ年に東宝で映画化され、翌年にはTBS系でテレビドラマ化されました。
ともかくすごい作品です。
原作の小説に始まり、映画、漫画と、どれも素晴らしい作品になっています。


タイトルからも分かるように、日本が沈没してしまうという信じられないような途方も無い設定になっているわけですが、
小松左京氏の事細かな科学的根拠を背景に描かれた日本沈没のシナリオは、あながち空想物語に留まりません。
もしかしたら本当に有り得るのではないかと感じてしまうほどの完成度の高さになっています。


各地で次々と火山の噴火や地震が発生していき、日本沈没が現実のものとして迫ってくる緊迫感ももちろん大きな見所ではあるのですが、
この作品のもう一つの見所は、政府が1億人以上の日本国民を海外に脱出させるため、国連や世界各国に日本人の受け入れを求めるという計画で、いろんなものが見えてくるのです。
これだけの数の日本人が難民となり、国外に移り住まなくてはならなくなってしまった事態は、今現在の日本だからこそ、あらためて諸外国との関係を考えるべきものを感じました。


一見、災害パニックスペクタクルな内容の作品ですが、実は世界にとって日本はどういった立場にあるのかを考えさせられる、非常に政治的な内容も重要な部分となっている作品なのです。
国というものは何なのか、そういったことを考えさせてくれる奥深い作品です。
小説は難しいと考えている方は、是非この漫画(劇画?)作品を読んでみてはいかがでしょうか。
さいとう・プロの作り上げるリアリティ溢れるビジュアルが、紙面の中から壮大な興奮と感動をかもし出してくれます。

(漫画本エッセイ146)