吉祥天女

別コミフラワーコミックス 全4巻

作者:吉田秋生
出版社:小学館
初出時期:1983年(別冊少女コミック)
分野:少女マンガ
ジャンル:ミステリー
内容:謎の美少女・小夜子が転校してきた日から、次々と起こる怪奇な事件の 真相は…。本格的ミステリアス・ロマン。


吉田秋生氏の初期の頃のだいぶ古い作品ですが、今読んでも全く古さを感じさせない素晴らしい作品となっています。
全4巻と、割と短めで完結されています。
この頃の画風は、こういったミステリアスな作品に大変マッチしているのではないかと思います。
この頃の人物のタッチは、大友克洋氏の作品に似ていると感じたのは私だけでしょうか。


謎めいた絶世の美貌を持つ少女が転校してきた時から、平穏だった学園に次々と怪奇な事件が起こっていきます。
男だけでなく女性をも魅了してしまうような主人公の叶小夜子の魔性の魅力には、何か謎に満ちた影が隠されているのです。


基本的には女性の立場から見て共感できる作品だとは思うのですが、
男性も読んでみれば、それなりに面白さというより、女性の中に潜む怖さを感じる事が出来ると思います。
ミステリアスな雰囲気は十分出ていたと思うのですが、結局小夜子には何か不思議な力があったのか?
とか、小夜子の生い立ちや周辺の状況が今ひとつあやふやなような気がして、
逆にこの方がミステリアスに感じるからそうしたのか、ともかくせっかく面白い題材なのだから、
もう少し深く、長く描かれてもよかったのにと感じてしまいました。


タイトルの「吉祥天女」にある「吉祥天」は、人々に至福を与えるという愛 の女神と言うことですが、
この「吉祥天」 に関しての情報がもう少し描かれていて欲しかったです。
「吉祥天」がどういった神なのか、知っていて読むのと知らないで読むのとでは感じ方が違ってくるような気がしました。

2006年にテレビ朝日系で実写版ドラマが放映されました。
小夜子を演じたのは岩田さゆりでしたが、実写にするとなると今の日本のこの年頃の女優で当てはまる人がいるのでしょうか。
ある意味この作品の実写化は、主役の小夜子で全て決まるような気がします。
そういった意味でもこのテレビドラマは、ちょっと残念な気がしました。
2007年には鈴木杏主演で実写映画が公開されました。

(漫画本エッセイ144)