のたり松太郎

ビッグコミックス 全36巻

作者:ちばてつや
出版社:小学館
初出時期:1973年(ビッグコミック)
分野:青年マンガ
ジャンル:相撲
内容:人並みはずれた怪力を持つ傍若無人の坂口松太郎が相撲の道に入り、
そこでの相撲部屋の生活や力士たちの人生がじっくりと描かれた大長編作品。



舞台は九州・長崎の廃坑の町から始まります。
主人公の坂口松太郎は、中学生だけどすでに3年も留年している粗野でどうしようもない人間でした。
しかしその人並みはずれた体格と力は、相撲部屋の親方たちの目にとまり、
想いを寄せる女教師・南令子の近くに住みたいという理由だけで雷神部屋へ入門することとなり、
力士への道を歩き始めるのです。


主人公はもちろんタイトルのとおり坂口松太郎なわけですが、実はもう一人の主人公がいます。
それは田中清。内気で無口で体と気が小さいために、なかなか出世できずにいた秋田県出身のこの田中清が、
松太郎の後を追いながらも関取の道を目指していきます。
あまりパッとしないキャラですが、東北人の朴訥とした人柄が滲み出ていて、
なかなか味わい深いキャラとなっています。
後半はこの田中清の活躍が中心となっていきます。


この作品の主人公である坂口松太郎は、
ちばてつや氏の代表作でもある「あしたのジョー」の矢吹丈ようなカリスマ的な魅力はないけれど、
傍若無人な人間性の中にも、なんともいえない人間くささを感じてしまいます。
そんなどうしようもない荒くれものだった主人公の坂口は相撲の世界に足を踏み入れ、
その世界の中での人間ドラマが描かれていきます。


ビックコミック系での作品はよくあることですが、ともかく長い時代に渡って連載された作品です。
1973年に連載が始まり、途中少し間が空きましたが、20年を超える大長編作品となりました。
派手な作品ではないですが、相撲部屋での力士たちの一喜一憂がじっくりと描かれていて、
なんとなく引き込まれていく味わい深い作品だと思います。

(漫画本エッセイ142)