BIG SPIRITS COMICS SPECIAL 全5巻
作者:松本大洋
出版社:小学館
初出時期:1996年(ビッグコミックスピリッツ)
分野:青年マンガ
ジャンル:卓球
内容:地上最速の球技と言われる卓球に、それぞれの思いをぶつける高校生たちの熱い青春ドラマ。
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卓球と言う、どちらかと言うと地味な感じのするスポーツが、
松本大洋氏の描く独特のタッチによる描写で凄まじいほどの迫力で描かれています。
試合のシーンは、今までのスポーツものとは一味違った迫力を感じる事ができると思います。
そういった迫力だけでなく、
人物描写やそれぞれのキャラの思いや気持ちなども不思議な感じで伝わってくるのです。
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ストーリーは卓球でインターハイ優勝を目指す高校生の青春ドラマと言う、
よくありがちな話なわけですが、ともかくそれぞれのキャラクターが素晴らしいのです。
主人公はペコこと星野裕と、スマイルこと月本誠ではないかと思います。
この二人が静と動の対比のような性格で、二人の関係も面白いところだと思います。
全5巻で見事に完結している名作です。もうひとつ面白いところが、
全5巻の各表紙が主要のキャラが一人ずつ登場しているところです。
1巻はスマイル。
2巻は中国からやってきたチャイナこと孔文革。
3巻はアクマこと佐久間学。
4巻は最大のライバルドラゴンこと風間竜一。
そして最終巻の5巻がペコとなっているのです。
ストーリーに見事に合わせた表紙になっていると思います。
これだけでも完成度の高さを感じてしまいます。
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松本大洋氏の描く絵は、一般受けしづらいかも知れませんが、
緻密さと荒削りさが共存する独特の味が有ります。
コマ割りの一つ一つのカットは様々なアングルから描かれ、
そのセンスの良さや迫力は、まるで映画の1シーンのような感じで堪能できると思います。
この独特の世界観を好むファンも少なくないようです。
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2002年に大ヒットとなった窪塚洋介主演の映画「ピンポン」の原作です。
連載が終了してから4年以上も経ってから映画化されました。漫画原作の実写化としては、
非常に良くできた映画だと思います。
監督の曽利文彦氏がVFXスーパーバイザーとして数々の映画を手がけてきたせいか、
試合での球を打ち合うシーンなどは、無理がなく、とても迫力が有ったと思います。
脚本もあの宮藤官九郎氏ということもあり、面白く、センスあるものに仕上がっていると思います。
あとは何と言っても各出演者がキャラにぴったりだったと言うところでしょう。
ペコはもちろん、スマイルもドラゴンもはまり役でした。
特にコーチのバタフライジョーこと小泉丈の独特の癖のあるキャラは、
竹中直人氏が見事に演じていたと思います。
(漫画本エッセイ138)
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