少年サンデーコミックス 全33巻
作者:藤田和日郎
出版社:小学館
初出時期:1990年(少年サンデー)
分野:少年マンガ
ジャンル:オカルト
内容:妖怪を倒す槍を手に入れた潮と、500年ぶりに現代に解き放たれた大妖怪「とら」が、
様々な妖怪との戦いを繰り広げる大冒険活劇。
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様々な妖怪との戦いが描かれているわけですが、
少年マンガらしい痛快感を感じる解かりやすい作品だと思います。
しかし、なぜその妖怪が生まれたかなどの背景の設定もしっかりしているために、
最初から最後まで非常に読み応えのある素晴らしい作品に仕上がっていると思います。
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主人公の蒼月潮(あおつきうしお)は、
自分の住む寺の蔵で2千年以上昔に妖怪を退治するためのみに作られた「獣の槍」で、
壁に縫い付けられたいた大妖怪の「とら」を500年ぶりに開放してしまいました。
開放されるや否や「とら」は、潮を食らおうとするのですが、
人の魂を力に変え、妖怪を討つといわれる「獣の槍」を手にした潮には歯が立たないのです。
そして二人の奇妙な関係が始まっていきます。
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この作品の主人公はタイトルの通り、潮と「とら」なわけですが、
二人のキャラ設定が非常にしっかりしていると思います。
「とら」は潮を食うために取り憑きましたが、
「とら」と潮の間には次第に最初の頃とは違った感情が芽生えてくるのです。
潮の「とら」に対する感情や、元々は大妖怪で人間を食らっていた「とら」の心の変化は、
この作品の面白さのひとつだと思います。
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絵柄は迫力がありながらも繊細なタッチで、非常に丁寧に描かれていると思います。
表紙などのカラーの絵を見ると、大変素晴らしいもので、
特に「とら」のビジュアルは迫力があるだけでなく、美しささえ感じるほどです。
OVAでアニメ化されているようですが、どのくらいの出来になっているのか見てみたいです。
この作品は第37回(平成3年度)の小学館漫画賞を受賞しています。
(漫画本エッセイ134)
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