犬神

アフタヌーンKC 全14巻

作者:外薗昌也
出版社:講談社
初出時期:1996年(アフタヌーン)
分野:青年マンガ
ジャンル:動物・犬・SF
内容:高校生の島崎史樹は、謎の大型犬「23」との出会いから驚愕の事件へと巻き込まれていく。
壮大なサスペンスSF作品。


冒頭からいきなり登場するのは猫と一匹の大型犬。
この犬は体から刃物のような武器をだし、人間の言葉をしゃべる事ができ、
何者かに「人間を見ろ」と命じられてやってきたなのに満ちた生命なのです。
そして、宮沢賢治の詩をこよなく愛する高校生の島崎史樹と出会い、
この二人が中心となって物語が進んでいきます。


この日本狼には「23」という不思議な刻印があり、
島崎史樹はそのまま「23(ニジュウサン)」と名付けました。
そして二人の関係はどんどん強い結びつきを深めていきます。
実はこの「23」という数字は、20世紀最大の黒魔術師といわれるアレイスター・クロウリーが、
「23個の元素による生命の樹宇宙論を展開する」とした謎の数字なのです。
ちなみに「新世紀エヴァンゲリオン」のテレビアニメのオープニングムービーで最初にバックに現れるのが、
このクロウリーの唱える「23個の元素による生命の樹」なのです。


島崎史樹は、問題にぶつかった時に「明日世界が終わればいい!!」と考えてしまうような、
少々内向的な性格なのです。
しかしこういったことは誰でも一度は考えた事があるのではないでしょうか。
そんな島崎史樹が「23」との出会いで、どんどん変わっていきます。
そして史樹と「23」の結びつきは、人間と犬に捉われない深い絆で結ばれた信頼関係というものに、
大きな感動を覚える事ができると思います。


地球上での人間の存在意義を問うような奥深い内容で、
現代社会に警鐘を鳴らすような驚愕の作品です。
読み進めていっても謎は深まるばかりで、
ふと気付けばいつの間にか全部読んでしまっているような魅力ある作品です。
ともかく人間がどんどん死んでいき、なかなかスプラッターなシーンの多い作品なので、
そういったシーンに弱い人は気をつけて読んでください。
この作品を映像化するのは日本では無理のような気がします。
それだけスケールの大きい作品だと思います。

(漫画本エッセイ133)