人魚シリーズ

るーみっくわーるどスペシャル 全2巻

作者:高橋留美子
出版社:小学館
初出時期:1984年(少年サンデー)
分野:少年マンガ
ジャンル:SF・ホラー
内容:食べると不老不死となる人魚をめぐって、人間の苦悩と悲哀が描かれた短編読切のSFホラー大作。


高橋留美子氏の作品と言えば、「うる星やつら」や「犬夜叉」など、有名な人気作品が数多くありますが、
この「人魚シリーズ」は、それらのメジャーな作品のような人気は無いようですが、
同じ短編SFシリーズの「るーみっくわーるど」と共に、
高橋留美子氏のSF作品の出来の良さを堪能できる作品だと思います。

最初に登場した時は、「人魚の森」「人魚の傷」の2巻に収録されていました。
最近のリニューアル版は、さらにもう1巻「夜叉の瞳」が追加して販売されています。


人魚の肉を食べて不老不死になってしまった元漁師の湧太は、
普通の人間に戻るために、500年もの長き時代にわたって再び人魚に会うための旅を続けてきました。
そして現代にまで生きてきた湧太は、やはり人魚の肉を食べて不老不死となった真魚(まな)と出会い、
「人魚の伝説」に惑わされる人々の悲哀を見続けながら、共に終わりのない永遠の旅を続けて行くのです。


不老不死という人間の欲望は、昔から消えることのない欲望のひとつです。
若さを保ちたい、死にたくないと言う、永遠に続く人間の欲望は、実は永遠の孤独の中で、
死ぬこともできずに生きていかなければならない、と言う苦悩を抱えることになるのです。
そしてこの作品の中の不老不死の妙薬とされる「人魚の肉」が人の心を惑わし、
様々な悲劇を生んでしまうのです。人間の欲望の深さが招く悲劇をしみじみと感じてしまいました。


1991年にアニメ化され、ビクターエンタテインメントからOVAとして発売されました。
その後2003年にはテレビ東京系列で「高橋留美子劇場・人魚の森」としてテレビアニメ化もされました。
1989年には、NHK-FMで「ミュージカルファンタジー・人魚の森」というラジオドラマとして放送されました。
湧太を野口五郎、真魚を島田歌穂がそれぞれの声を演じていました。

(漫画本エッセイ131)