鉄腕アトム

手塚治虫漫画全集 全18巻

作者:手塚治虫
出版社:講談社
初出時期:1952年(少年)
分野:少年マンガ
ジャンル:SF
内容:21世紀の未来を描いた永遠不滅のロボットSFヒーロー作品。


ほとんどの日本人がこの名前を知っているのではないでしょうか。
海外にもその知名度が高く知れ渡っています。
名実ともに日本の漫画、そしてアニメとしても原点的な作品ではないかと思います。

「アトム誕生編」の冒頭には、「なぜ人間はロボットをつくるのか」という言葉で始まっています。
そして今現在の世の中を見てみると、ちょっと考えさせられてしまいます。
何事にも便利になった文明が果たして人間にとって良いことなのかと。
ロボットなどの文明の利器に関する手塚治虫の考え方や、なぜアトムが誕生したかなど、
単純にロボットヒーロー作品に留まっていないと思います。
手塚治虫氏がアトムを生み出したポリシーなどからも、
人間と科学文明が生み出したロボットの関係などの奥深さを感じる事ができる作品だと思います。


1952年という、まだ戦後10年にも満たない時代に、この作品は登場しました。
今から60年前に登場した作品のわけです。
さすがにコマ割などは少々古さを感じますが、
この時代に描かれたマンガ作品の中ではその画力は秀でたものを感じます。
これだけのキャラクターを作り上げた手塚治虫氏の才能には驚きを隠すことはできません。


設定ではアトムの誕生日は2003年4月7日。
もうすでに過ぎ去っている時代となってしまいました。
主題歌にもあるように、アトムの能力は足からのジェット噴射で空を飛びます。
そして60か国語を自由に話し、聴力は1000倍、眼はサーチライトになります。
さらに力は10万馬力(後に原作では100万馬力に強化されました)です。
こんなロボットは21世紀に入った今でも実現はされていません。
まだ漫画やアニメの中でしか存在していないアトムは、
現在、埼玉県新座市の市民に登録(世帯主はお茶の水博士)されています。
作品の中では苦労して市民権を得ることとなっていました。
ほんとうにこの先、アトムのようなロボットが誕生したときには、市民権の問題などは簡単には行かないのでしょう。


当時日本で普及し始めたテレビでアニメとして登場したときには、日本中が熱狂したようです。
それはそうでしょう、テレビという文明の利器に驚かされているのに、
アニメという初めての娯楽がこれだけの強力なキャラクターで登場したのですから。
1963年1月1日という正月の元旦から放送が開始されたというのも、テレビ局の力の入れ方を感じてしまいます。
そして1966年12月31日という、これまた区切りの良い日まで続けられました。


(漫画本エッセイ127)