風の谷のナウシカ

アニメージュコミックス ワイド版 全7巻

作者:宮崎駿
出版社:徳間書店
初出時期:1982年(アニメージュ)
分野:少年マンガ
ジャンル:SF
内容:こよなく自然を愛する風の谷の姫のナウシカが、人間によって汚されてきた地球を救う姿が描かれた壮大なSFロマン。


1984年に劇場アニメとして登場しました。
日本のアニメを世界に知らしめた宮崎駿氏の出発点と言ってもいい名作の原作漫画です。
宮崎駿氏自身が書き上げ、月刊アニメージュで連載されていました。
本人は「自分には漫画家の才能が無い」と言っているらしいですが、
非常に味のある絵柄は、他の漫画作品とは少々違った趣を味わわせてくれると思います。


地球上で繁栄をきわめていた人類は、 「火の7日間」と呼ばれる大戦争によってその文明は壊滅してしまいました。
そして千年ののちに、荒れ果てた地球上には有毒な瘴気を発する菌類が茂る腐海に征服されようとしていました。
そして、わずかに生き残った人類は腐海のほとりに瘴気を避けながら生存を続けていました。
しかし人類は懲りもせず、再び無益な醜い争いを始めていたのです。


アニメ版は、この原作漫画全7巻のうちの前半2巻ぐらいの部分が作品化されています。
ストーリーもだいぶ簡略化されています。
アニメ版も十分満喫できる作品になっているのですが、この漫画版を読んでみると、実に奥深く、
壮大な世界観を感じる事が出来ると思います。
その後に作られた「もののけ姫」よりもメッセージ性が強いという人も多いようです。


アニメ版にも出てくる「巨神兵」は、この作品を読むことによって全く違ったものが見えてきます。
そしてその存在の意味もわかることと思います。
前半は王蟲(オーム)、後半は「巨神兵」がストーリーの中心になっています。
ちなみに「ナウシカ」と言う名前は、ギリシヤの叙事詩オデュッセイアに登場するパイアキアの王女の名前なのだそうです。


この作品の中でナウシカが語っている言葉に、
「猛毒を放つ腐海の植物群は綺麗な空気の中で育てば、毒を放たない。汚れているのは土」
というものがありました。
今の世の中にも思い当たる事がたくさんあるのではないかと思いました。
自然にはない様々な有毒物質を作り、人間に害を及ぼすだけでなく、昆虫でも動物でも簡単に葬ってしまいます。
本当にエコロジーなどと言うものを考えるなら、
人間はどういうことをしなければならないのか考えなければならないのかもしれません。


(漫画本エッセイ125)