白泉社文庫 全4巻
作者:大島弓子
出版社:白泉社
初出時期:1978年(LaLa)
分野:少女マンガ
ジャンル:動物・猫
内容:擬人化された猫たちの世界がメルヘンチック描かれた、猫ファンタジーの最高傑作。
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猫が主人公の作品なわけですが、一見そう見えないのは、
出てくる猫がみんな擬人化されている珍しい作品です。
主人公のチビ猫は、小さなエプロンドレス姿の女の子の姿をしています。
そして口には小っちゃな牙が生えていて、頭には猫耳がついているのです。
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ある雨の日に、ペルシャの入った雑種の子猫は予備校生の時夫に拾われて、
諏訪野家の一員となりました。
チビと名づけられたチビ猫は、いつかは人間となれると信じていました。
でも、幻の銀猫のラフィエルと出会い、猫は猫のまま終わり、
真綿の原のある「綿の国」へ旅立っていくと聞かされるのです。
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チビ猫が見る人間の世界は不思議なことばかりです。
猫の世界や猫の視線から見た人間の世界が擬人化された猫のキャラクターにより、
大島弓子氏の柔らかいタッチの絵とともに、
メルヘンチックなファンタジーの世界が作り上げられています。
ところどころに出てくる全面のカットなどは、
大きな余白や黒くベタ塗りつぶされた背景などが奥深い印象を作り上げ、
ポエムのような言葉とともに、素敵な絵本を見ているように感じられます。
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他の評論でこの作品が、
「猫の姿を借りて少女の内面を見事に描いた」と評されていると書いてあるのを見ましたが、
確かに擬人化されたチビ猫の単純だけど純粋な悩みは、
思春期の時期に味わう悩みにも通じる部分があるのではないかと思いました。
この作品は第3回講談社漫画賞を受賞し、1984年には劇場版アニメにもなっています。
(漫画本エッセイ124)
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