YASHA 夜叉

別コミフラワーコミックス 全12巻

作者:吉田秋生
出版社:小学館
初出時期:1996年(別冊少女コミック)
分野:少女マンガ
ジャンル:ハードロマン
内容:遺伝子操作によって作られた超人的な双子の兄弟が、人類の存亡をかけた戦いを繰り広げる。小学館漫画賞受賞作品。

◆呪われた生い立ちから、それぞれの境遇で育った双子の兄弟が主人公です。
基本的には双子ものの王道という感じです。
光と影、正と邪の対立といった感じで進んでいきます。
ストーリーの中心となる遺伝子操作というテーマは、そうとうに奥深いものを感じます。
タイトルの「夜叉」も、そんなところから来ているわけですが、詳しくは読んでのお楽しみ。


人間離れした特殊な能力を持つ主人公の有末静と雨宮凛の二人の兄弟は、
遺伝子操作という人為的な行いによって生まれました。
遺伝子操作という行為は、現実にも他の動物ですでに数多く行われているわけです。
人間の遺伝子に関しては、倫理上では現在手を出してはいないと言ってはいます。
しかしヒトゲノムの解析などはどんどん進んでいて、何だか実際にも起こりそうな、
実際に起こっていそうな、非常にリアリティーのあるストーリーだと思いました。


人間の遺伝子を操作するという神をも冒涜するような行為、そこからこの物語は始まっています。
そしてネオ・ジェネシス(新・創世記)構想という、
「人間は減った方が地球のため」という極一部の特権階級から生まれた過激な考え方が、この物語を進めていきます。


さらに兄弟の対立の元になる、人為的な遺伝子操作で作られたウイルスによる高年齢層をターゲットにした人口削減計画は、
確かにヒトラーに匹敵するような過激な考え方でしょう。
しかし実際にも各国で人口増加や高齢者の増加で様々な問題が出てきているのも事実なのです。
フランスの思想家が言った言葉にこんなものがあります。
「老人に対してどのように接しているかを見れば、その社会の品がわかる」。
現在の我々の社会は、品が良いと言うことができるでしょうか。


2000年にテレビ朝日系で実写ドラマ化されました。
伊藤英明さんの初主演作品です。

(漫画本エッセイ099)