フィフティーン・ラブ

少年マガジンコミックス 全11巻
KCスペシャル 全6巻

作者:塀内夏子
出版社:講談社
初出時期:1984年(少年マガジン)
分野:少年マンガ
ジャンル:スポーツ・テニス
内容:幼さの残る少年がテニス界の頂点を目指す、明朗快活スポーツ作品。


数年前に「エースをねらえ!」の実写版がテレビドラマで放映されました。
ちょっと前にはテレビアニメ「テニスの王子様」も人気で、実際のテニス界も伊達公子さんが復活したり、
このところ、けっこうなテニスブームのような感じがします。
この作品が登場した80年代半ばもテニスブームだったように思います。
ナブラチロワ、エバート、コナーズ、マケンローなど、個性豊かなプレーヤーがたくさん活躍していました。
そんな中、ウインブルドンで優勝した17歳の少年ボリス・ベッカーが話題を呼んでいました。
タイプは違うけれど、この作品の主人公のヒロこと松本広海、はこのベッカーとダブって見えてきます。


主人公の松本広海(ヒロ)は、背は小さいけど、足の速さはピカイチの陸上部のエース。
負けず嫌いの性格が禍して、ひょんなきっかけからテニスを始めることになります。
そして様々な人たちと出会いながらテニス界の頂点を目指していくのです。
少年マンガらしい、爽やかなスポーツ作品です。


主人公のヒロはけっして良い性格とは言えず、わがままで、自分が一番でなくてはいられない、
でもだからこそ孤独な戦いのテニスで頂点を目指す強さがあるのかもしれません。
そしてそんな子供のような性格が少しずつ成長していくというプロセスも見所のひとつなのでしょう。


この作品の魅力のもうひとつは、しっかりと作られた脇役のキャラだと思います。
ライバルの「黒豹」と呼ばれるデビー・コステン、たよりになる兄貴分のビリー、
嫌味なバグジー・アーロンなど、それぞれの生い立ちなどもしっかりと描かれているため、
そのキャラへの思い込みもさらに強くなっていきます。
塀内夏子氏の絵は非常にレベルの高さを感じます。
ストーリーのワクワク感とともに、ひとコマひとコマの絵にはドラマチックさを感じ、
一気に読み進めて行くことができ、感動を与えてくれると思います。

(漫画本エッセイ088)