はだしのゲン

中公文庫コミック版 全14巻

作者:中沢啓治
出版社:集英社
初出時期:1973年(少年ジャンプ)
分野:少年マンガ
ジャンル:戦争
内容:原爆をテーマに勇気と感動を与え、戦争というものを考えさせる、超ロングセラーの名作コミック。


戦争をテーマにした作品で、ここまでリアリティある悲惨さを前面に打ち出した作品があったでしょうか。
すでに半世紀以上も過去の事実となってしまった広島の原爆投下という大惨劇。
作者の中沢啓治氏の決して写実的とはいえない絵柄ながら、
妙に説得感のあるタッチがこの史実をしっかりと伝えてくれています。
作者の自伝によると、かなり表現を甘くして描いたとの事らしいです。
こういった内容が「少年ジャンプ」という少年誌で取り上げられただけでもすごいことだと思います。


物語は昭和20年4月の広島から始まります。
主人公の中岡ゲンは、家族とともに太平洋戦争という大変な状況下の中、
日々の空襲に耐えながらも明るく逞しく暮らしていました。
そして運命の8月6日の朝がきました。
広島に世界でも最初で最後の恐怖の原爆が投下されたのです。
一瞬にして一面焼け野原となってしまった地獄の広島の町で、ゲンの新たなる人生が始まるのです。


この作品は原爆の凄まじさだけではなく、
戦時下と言う特別な時代の中での理不尽な生活や、戦後の苦しい中でのたくましく生きていく姿など、
戦争というものが、一人の少年にとってどういったものに写っているのかが非常によく描かれていると思います。


1976年には三國連太郎などの出演で映画化され、アニメ化もされています。
他にもミュージカルの題材にもなっていたり、絵本になっていたり、様々な形態で使われてきました。
戦争を知らない人の方が多くなってきている時代ですが、
この作品で本当の戦争の怖さ、悲惨さを感じることができるのではないで しょうか。

(漫画本エッセイ086)