家栽の人

ビックコミックス 全15巻

原作:毛利甚八 作画:魚戸おさむ
出版社:小学館
初出時期:1988年(ビッグコミック・オリジナル)
分野:青年マンガ
ジャンル:社会・法律
内容:家庭裁判所の判事が主人公。様々な判例の中で、様々な人間模様が描かれている。


朴訥とした主人公の桑田義雄は、家庭裁判所の判事を勤めています。
家庭裁判所にやって来る屈折した社会の中で生きる人々と、好きな植物とを同じ視線で見つめ、
裁判や調停という複雑な人間関係を、厳しくもやさしく接しながら、解決していきます。


家庭裁判所を舞台としたヒューマン・ドラマですが、絵はうまいと思うのですが、
少々主人公の魅力に欠けるかなと言う気もしました。
しかし、こう言う漫画は派手さはいらず、じっくりと読んで味が出てくると思います。
何年か前にテレビドラマ化された時には、とてもいい感じのドラマになっていたと思います。
その時のドラマは片岡鶴太郎さんが主人公を演じていました。
絵の感じとはだいぶ違っていましたが、けっこう雰囲気は合っていたと思います。


タイトルをよく見ると「家裁」ではなく、「家栽」となっています。
かってな憶測ですが、家庭裁判所を家庭栽培とひっかけて、
様々な種類の植物の生態を歪んだ人間社会と比べながら、
人間も自然界の中の一員であることなどを言いたいのでしょうか。


少々地味な作品ですが、現代社会へ向けたメッセージがしっかり感じられる、貴重な作品だと思います。
下手な教科書よりも、人間形成に役立つ素晴らしい作品だと思います。

(漫画本エッセイ065)